愛知県春日井市と岐阜県多治見市の間にまたがって1900年(明治33年)に開通し、いまは廃線となった「愛岐トンネル群」。
通常時は非公開ですが、年に二度だけ一般公開され、美しい廃線跡の自然と明治を思わせる赤レンガの様式美を楽しめます。
調査員F
今回は、GWど真ん中に開催される「春の特別公開」を公開前に事前レポート!美しい新緑と鯉のぼりのコラボレーションを楽しんでみてください。
目次
【2024】第32回 愛岐トンネル群 春の特別公開 開催概要
- 日程:2024年5月2日(木)~5月6日(振休)
- 場所:旧国鉄中央線3号~6号トンネルと廃線跡地 約1.7km(往復3.4km)
- アクセス:JR中央線「定光寺駅」下車徒歩約3分
- 駐車場:なし
- 開場時間:9:30~15:00
- 料金:1人100円(当日払い) ※小学生以下は無料
トンネル群のレイアウト・詳細情報
- 距離:片道1.7km(往復3.4km)
- 所要時間:約2時間(休憩なし)
- トイレ:3か所(入口階段下、レンガ広場、6号多治見口)
- 売店:マルシェ広場にて弁当、飲み物など
愛岐トンネル群 春の特別公開のアクセス
愛岐トンネル群の付近には駐車場がないため、電車での来場となります。電車でのアクセスは、JR中央線「定光寺」駅から徒歩約5分となります。
通常時、JR名古屋駅から定光寺駅までは1時間に2本の普通電車が出ており、約37分で到着します。ただし特別公開期間中に限り、一部の快速電車が臨時停車するようです! ※詳しくは駅員にお尋ねください。
調査員F
「定光寺」駅は無人駅のため、往復切符かICカードの利用がおすすめです♪
定光寺駅から庄内川沿いを歩いていくと、突如入口ゲートが現れます。入り口はここ。「愛岐トンネル群」と記されたプレートが取り付けられた赤レンガは、愛岐トンネル群発見のきっかけとなったJR勝川駅のプラットホームをはがして持ってきたものなんですよ。
愛岐トンネル群 春の特別公開 散策マップ
1~14号まである愛岐トンネル群のうち、現在一般に公開されているのは3〜6号。およそ1.7㎞の区間を往復する約2時間の散策コースとなっています。
また、入口から3号トンネルを抜けた先までの通路は一方通行となります。復路は、4号トンネルを超えて竹林のあたりまで戻って来たところで出口に分岐するため、3号トンネルを見られるのは往路だけということになりますね!
愛岐トンネル群(旧国鉄中央西線 廃線跡)とは
年に2回の特別公開のほか、夏にはビアホールなどのイベントも行われ、近年ますます注目されつつある愛岐トンネル群。
その正体は、明治33(1900)年に開通した旧国鉄(現JR)中央西線、高蔵寺・多治見間にある13基のトンネル群のこと。殖産興業を推進する明治時代、瀬戸焼や美濃焼といった陶磁器や、木曽路の森林資源などを運搬するために開通しました。
明治33(1900)年の開業直後から高度経済成長期までSL(蒸気機関車)が走り、東海地方の流通の大動脈として近代化を支えましたが、単線だったことから時代の流れに対応しきれず、昭和41(1966)年に廃線に。
その後半世紀ほど人々の記憶から忘れ去られていましたが、2005年に発見され2007年には保全活動が開始。
活動の甲斐あり、現在では登録有形文化財にも認定され、「日本3大廃線トンネル」のひとつにも数えられるようになりました。
調査員F
一度は忘れ去られた、日本の近代化を支えた過去の遺産「愛岐トンネル群」。
廃線当時のまま残されたその貴重な姿を見られるのが年二回の「特別公開」なんですよ。
「第32回 愛岐トンネル群 春の特別公開」公開前レポート!見どころを徹底解説
それでは、実際に「第32回 愛岐トンネル群 春の特別公開」の公開前の様子をお届け!入口から順番に見どころをレポートしているので、訪れる際の参考にしてみてください♪
新緑に染まる青モミジとトンネルの絶景
愛岐トンネルの見どころといえば、まず何と言っても美しい青モミジ。廃線付近には300本ものモミジが自生しており、美しい景観を生み出します。愛岐トンネル群は約半世紀も人の手が入らなかったことで、絶滅危惧種の草木など珍しい植物や動物が生息しているんですよ。
調査員F
写真は入口入ってすぐの「3号トンネル」前。公開期間中はSL実物大の垂れ幕がかかり、異世界への旅へいざなわれるようです。
ちなみに、各所には駅名標を模した看板が立っており、トンネルを巡る旅がよりいっそう楽しくなります。看板は全部で7つありますよ♪
「リユース柵」と「残存物パネル」
最初の「3号トンネル」を抜けると、赤色の落石防護柵が現れます。実はこの柵、使用済みのレールを再利用した「リユース柵」なんです。中央線が走っていた当時は鉄が高価だったため、こうしたところにも工夫が垣間見えて面白いですね。
リユース柵の下に見えるのは、整備当初廃線に落ちていた碍子や釘などの落とし物を展示する「残存物パネル」。中には当時汽車の窓から投げ捨てられたであろう駅弁のゴミなどもあり、時代をしみじみと感じることができます。
絶景の新緑に囲まれる「竹林」
その先に進むと、廃線跡唯一の竹林が現れます。真竹があおあおと広がり、青モミジとのコラボレーションが幻想的な空間を演出しており、見どころとなっています。
現在架かっている橋は手作りで新たに取り付けたもの。保存委員会の皆さまが工夫し、竹や木材、レンガなどを再利用したものは随所に見られるので、ぜひ探してみてください。
調査員F
今年は公開期間中、「竹林コンサート」も開催。オカリナや民族楽器の演奏が毎日10:00~14:00のあいだ行われます♪
4号トンネルと「レンガ割れ目」
次に現れるのは、長さが最も短い「4号トンネル」。入り口のモミジがトンネルのようなアーチを形成し、そのまま実際のトンネルへと連なる美しいビュースポットです。
トンネルの中には、壁面のレンガにひびが入った箇所が。実はこの割れ目、昭和初期にSLがカーブを曲がり切れず脱線してトンネルにもたれかかった際にできたもの。SLの足跡を感じる趣深いポイントです。
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さらに4号トンネルでは、内部を歩いているとみなさんもよく知る「あの音」が流れる仕組みになっています。何の音が聞けるのかは、行ってからのお楽しみ。
県下最大級のモミジが見られる「大もみじ広場」
4号トンネルを抜けると、トンネル群のシンボルツリーでもある巨大なもみじの木が現れます。樹齢120年にもなる木で、見る角度によって三本にも四本にも見えるから「三四五(みよい)の大もみじ」と呼ばれることもあるのだとか。
生命や自然の雄大さを感じる大木。手を合わせたくなるようなたたずまいで、見ていると何時間でも経ってしまいそうです。
鯉のぼり泳ぐ「マルシェ広場」
そろそろ入口から1kmほど。少し疲れてきたかな?というタイミングで開けた「マルシェ広場」に到着です。
ここではお弁当や飲料の販売があるので、ひと休憩していきましょう!
「春の特別公開」では、例年マルシェ広場に鯉のぼりが登場!今年2024年はゴールデンウィークと期間が被っているため、ちょうど「こどもの日」にも鯉のぼりと新緑の風景が見られます。小さなお子さんも大喜びですね♪
マルシェ広場 出店リスト&カレンダー
明治の赤レンガの輝きを残す「笠石洞暗渠」
マルシェ広場には深さ9mのぽっかりと空いた穴「笠洞石暗渠」があります。「暗渠」というのは、土砂崩れを防ぐために縦穴と横穴で山の水を川へ流すための水路で、実はこの暗渠、中に入れちゃうんです。
総レンガ造りとなっているこの笠洞石暗渠は陽の当たらない地下にあるため劣化せず、現在まで製造当時(明治時代)の赤レンガの輝きを見ることが可能。静かに地下で眠る明治時代のレンガは一見の価値ありですよ。
調査員F
暗渠の入り口は狭いのに加え、内部は足元も悪いため、十分注意して進んでくださいね。
コンサートが行われる「レンガ広場」と「SL動輪」
さて、それからまたさらに進み、「5号トンネル」を抜けると、「赤レンガ広場」が現れます。
床面に使われているレンガは、何度か5・6号トンネルが崩落したことで廃棄されたレンガを再利用したもの。公開中はこの場所がステージになり、プロやアマチュア問わずミュージシャンがコンサートをしてくれます。
またレンガ広場のとなりには、全国でも類を見ない「SL動輪の動態展示」もあります。
国内最大級の蒸気機関車「C57」の巨大な駆動輪はそれだけでもかなり珍しいものですが、この展示は「自転車を漕ぐと実際に動輪が回る」というとってもユニークなもの。子どもでも漕げるように調整されていて、公開時には順番待ちの列ができるほど!
ちなみに動輪の回った距離は、計測されて現在のJR駅に換算され、記録されてゆきます。
時間も空間も超えて、名古屋からバーチャル走行を続けるSLの動輪。前回の公開時(2023年秋)からさらに進み、もうすぐ定光寺駅に到着しそうです。みなさんも、訪れた際は力を合わせてSLを未来に向けて走らせてみてください。
鬱蒼とした新緑に包まれる「モミジ山」
レンガ広場からは、モミジが群生する「モミジ山」に入れます。2018年から整備が開始され、今では散策路が整い森林浴ができるようになっているんですね。
散策路は一方通行となっていて、歩きやすく整備された遊歩道をゆったりと散策できます。高台になっており、ここから望む庄内川と新緑のコラボレーションも見ものです!お見逃しなく。
「インバート展示」と「シンメトリー坑門」が見られる「6号トンネル」
ついに最後のトンネル「6号トンネル」までやってきました。長さが333mと現状最も長いトンネルで、これを抜けると岐阜県の多治見市との県境です。
6号トンネルの入り口には、トンネルの強度を上げるために底面を逆アーチで結合した「インバート」と呼ばれる覆工部分が展示されています。本来は地下にあるものであるため姿を目にすることはなく、見ることができるのは全国でここだけだそう!
そうして6号トンネルも歩き、「多治見口」から外に出ると世にも稀少な「シンメトリー坑門」が見られます。
通常トンネルはどちらかの方角から山がせり出しているなどで、180度綺麗にウイングが開いた状態が見られることは多くありません。6号トンネル多治見口はそんな「シンメトリー」坑門の華麗な姿が拝める見どころポイントなんですよ。
春の特別公開では、青モミジとシンメトリー坑門の美しいツーショットも。神秘的な雰囲気が味わえますよ。
玉野古道と玉野渓谷
愛岐トンネル群の散策路は、6号トンネルを抜けたところまで。これより先に7号・8号とまだ見ぬトンネルが続きますが、現在公開されている区間は6号トンネルまでということで、ここからは道を戻りながら見どころを見ていきましょう。
すぐそばを庄内川(このあたりでは玉野川)が流れる愛岐トンネル群では、典型的なV字渓谷となっている美しい玉野渓谷の眺めも楽しめます。
健脚者向けではありますが、脇には「玉野街道」と呼ばれる道も続き、川を眺めながら歩くことも可能。
玉野街道は、中央線開通直前の明治20年代に建設された街道で、陶磁器の集積地として栄えた多治見と名古屋をつなぐ道でありました。明治33年の中央線開通とともに使われなくなってしまいましたが、近年になって当時の事務所の公印が発見され「幻の古道」の存在が明らかになったといいます。
場所によっては、河原まで下りていくこともできます。風情ある眺めを楽しんでくださいね。
大人から子どもまで楽しめる!充実のアクティビティも
帰りのコースで、4号トンネルを超えて戻ってきたあたり、竹林のあたりから分岐する散策路があります。この道沿いには子どもたちが大はしゃぎする手作りのアクティビティも用意されているんですよ!
お子さん連れの方はぜひ一緒に遊んでみてください。子どもたちに楽しんでほしいという保存委員会の方々の想いがギュッと詰まっていますよ。
※子どもを遊ばせる際は、保護者の方が介助して安全には細心の注意を払って楽しんでください。
愛岐トンネル群 春の特別公開へ出かけよう
さて、いかがでしたでしょうか。今回はひと足早く中に入らせていただき、「愛岐トンネル群 春の特別公開」の見どころを徹底レポートしました。
「日本で2番目に美しい廃線跡」愛岐トンネル群は、トンネルのほかにも見どころがいっぱい。秋には紅葉が美しいですが、春もはつらつとした生命の力強さを感じて全く見劣りすることはありません。
現在公開されているトンネルは6号までですが、まだまだ調査の道のりは続きます。その価値を伝えていく活動は、いくつもトンネルを超えて未来へと続きます。
ぜひ、今ここだけでしか得られない瞬間を目の当たりにしてみてください♪
愛岐トンネル群 秋の特別公開 アクセスや見どころを徹底紹介
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