ひとくちに「わらび餅」といっても、お店によって性格がまるで違います。とろけるタイプ、噛むと押し返してくるタイプ、片手でつまめるタイプ。同じ名前の和菓子とは思えないほど別物なんです。

名古屋にはわらび餅の名店が点在していて、どこから行けばいいのか迷ってしまいますよね。そこで今回は、編集部が実際に4軒をハシゴして食べ比べてきました。覚王山・大須・矢場町・神宮前と、エリアもタイプもバラバラの4軒。最後には、夏のあいだは買えない季節限定の名店も紹介します。

目次

そもそも「本わらび粉」ってなに?

わらび餅の原料は本来、山に自生するワラビの根から採れるでんぷん、いわゆる本わらび粉です。ただ、これがとにかく採れない。ワラビの根10kgからわずか数十gしか取れないともいわれていて、市販のわらび餅の多くはさつまいもやタピオカ由来のでんぷんで作られています。

本わらび粉を使ったわらび餅は、色がほんのり黒っぽく、噛むとぐっと弾力を返してくるのが特徴。今回紹介する5軒のうち何軒かは、この本わらび粉にこだわったお店です。食べ比べると違いがはっきり出るので、そこも意識しながら読んでみてください。

1. 琥珀堂 大須店|500円で買える食べ歩きの主役

舟わらび/500円

まずは気軽に一軒目。大須の新天地通商店街にある「琥珀堂(こはくどう)」は、生わらび餅の専門店です。ここで頼みたいのが舟わらび 500円(税込)。その名のとおり、細長い舟形の容器にわらび餅がぎっしり詰まったテイクアウト専用メニューです。

とにかく見た目が華やか。きな粉がたっぷりかかった上に黒蜜がとろりと重なって、片手に持った瞬間から写真を撮りたくなります。大須は食べ歩きの聖地なので、あちこち回りながらつまむのにちょうどいいサイズ感。500円ワンコインというのも、ハシゴ前提の大須では地味に効いてきます。

琥珀堂は2022年に錦三丁目の1.5坪の店舗からスタートしたお店。希少な本わらび粉に蓮根由来の粉末を合わせることで、ふわっとろの独特な食感を作っているそう。チョコ生わらびもちはジャパン・フード・セレクションで金賞を受賞していて、藤井聡太王位の対局で勝負おやつに選ばれたこともあるんだとか。

なるしー

食感はやわらかめで、口の中でほどけていくタイプ。ずっしり系ではありませんが、歩きながら食べるならこのくらい軽いのが◎!

琥珀堂 大須店 基本情報

  • 住所:〒460-0011 名古屋市中区大須3-20-12(新天地通商店街)
  • アクセス:地下鉄名城線・鶴舞線「上前津」駅から徒歩約5分
  • 営業時間:12:00~19:00
  • 定休日:毎週水曜

2. おかしな大地 from farm to spoon 覚王山店|組み合わせが楽しいわらび餅

3種のわらびもち/900円

続いては覚王山へ。駅を出てすぐ、広小路通沿いに構えるのが「おかしな大地 from farm to spoon」です。岐阜・恵那の栗菓子店として知られる恵那川上屋が、食と農をテーマに立ち上げたコンセプトショップの1号店。店内奥には20席ほどのイートインスペースがあります。

お目当ては3種のわらびもち 900円(税込)。プレーン・黒糖・抹茶の3種類のわらび餅に、浅煎りきな粉・深煎りきな粉・焙煎栗粉・種子島黒糖の黒みつという4つの味が添えられて出てきます。単純計算で12通り。この組み合わせを考えている時間が、正直いちばん楽しかったです。

面白いのは、きな粉が浅煎りと深煎りの2種類あること。浅煎りは大豆そのものの甘さがふわっと立ち上がり、深煎りは香ばしさがぐっと前に出ます。同じわらび餅に乗せているだけなのに、まったく別の菓子を食べている感覚。焙煎栗粉は恵那川上屋ならではで、栗の香りが鼻に抜けていきます。

なるしー

わらび餅自体はぷるんとした弾力タイプ。ひとつが大きめなので、味を変えながら食べても最後まで飽きません。ひとりでじっくり味わうのはもちろん、2人でシェアして「今どれ乗せた?」と話しながら食べるのにも向いています。

おかしな大地 from farm to spoon 覚王山店 基本情報

  • 住所:〒464-0841 名古屋市千種区覚王山通9-15-2 DIS覚王山ビル1F
  • アクセス:地下鉄東山線「覚王山」駅1番出口から徒歩約2分
  • 営業時間:10:00~19:00(L.O. 18:00)
  • 定休日:毎週火曜(火曜が祝日または21日の場合は営業、翌水曜が臨時休業)

3. もちつもたれつ 神宮店|14時以降だけの一皿

自家製わらびもち/1,100円

3軒目は熱田神宮のすぐそば。名鉄神宮前駅から徒歩2分の「もちつもたれつ」は、つきたてのお餅とせいろ蒸しを看板にしたお餅茶屋です。愛知県産「十五夜餅」の餅米を使ったお餅がメインなので、わらび餅は完全に隠れメニュー枠。

というのも、自家製わらびもち 1,100円(税込)は期間限定、しかも14時以降のティータイムしか注文できません。 ランチで訪れると出会えないので、狙って行く必要があります。

出てきた一皿は、余計な飾りのないシンプルな構成。ただ、口に入れた瞬間にわかります。わらび粉がしっかりしている。歯を入れるとむにっと押し返してきて、噛みしめるほどにでんぷん本来のやさしい甘さが出てくるタイプです。とろとろ系に慣れていると、最初は「重い」と感じるかもしれません。でもこれが本来のわらび餅の姿なんですよね。

店内も気持ちのいい空間で、器は佐賀の伊万里焼・有田焼、照明はイサム・ノグチがデザインした和紙のAKARIシリーズ。40席と広めなので、熱田神宮のお参り帰りにひと息つく場所としても優秀です。

もちつもたれつ 神宮店 基本情報

  • 住所:〒456-0031 名古屋市熱田区神宮3-7-1 べんてんビル1F-3
  • アクセス:名鉄名古屋本線「神宮前」駅から徒歩約2分(熱田神宮 東側)
  • 営業時間:11:00~18:00(料理・ドリンクL.O. 17:00)
    ※自家製わらびもちは期間限定・14時以降のみ注文可
  • 定休日:毎週火曜

4. 雀おどり總本店|和菓子屋が本気で作るわらび餅

蕨餅/1,100円

最後は矢場町。松坂屋南館の向かい、大津通沿いに建つ「雀おどり總本店」です。創業は安政3年(1856年)、江戸時代末期から続く老舗で、現在は7代目。ういろで知られるお店ですが、喫茶スペースでいただける蕨餅 1,100円(税込)が、今回まわった中でも群を抜いていました。

まず驚くのが温度。器の中に氷水を張った状態で運ばれてきて、ひんやりと冷え切っています。この冷たさがわらび餅の弾力を引き締めていて、箸で持ち上げたときの張りがまったく違う。添えられるのは黒蜜ときな粉、それに温かいお茶。冷たい餅と温かいお茶の行き来が、また気持ちいいんです。

食感は、とろとろでもぷるぷるでもなく、「とろっもち」としか言いようのない中間地点。噛むとやわらかくほどけるのに、その手前で一瞬だけ抵抗がある。個人的には、この4軒でいちばん記憶に残ったのがここでした。 温度・食感・味のバランスに一切の緩みがない、和菓子屋の本気です。

店内には池があって、本物の鯉が泳いでいます。栄のど真ん中にいることを忘れる空間。あんみつやぜんざい、夏はかき氷も揃っているので、わらび餅と合わせてゆっくり過ごすのがおすすめです。

雀おどり總本店 基本情報

  • 住所:〒460-0008 名古屋市中区栄3-27-15
  • アクセス:地下鉄名城線「矢場町」駅5番出口から徒歩約3分
  • 営業時間:販売 10:30~19:00/喫茶 10:30~18:00
  • 定休日:元旦

5. 芳光|夏はつくらない幻のわらび餅

最後に、季節限定のわらび餅をご紹介。東区・徳川園のほど近くに店を構える御菓子処「芳光(よしみつ)」は、名古屋のわらび餅を語るうえで外せない存在です。1964年の創業で、初代は京都の老舗「塩芳軒」で修業をされたと伝わっています。

なるしー

品質を守るため、7月から9月ごろは製造をお休みし、例年10月ごろから翌初夏にかけて店頭に並びます。わらび餅=夏のお菓子というイメージがあるだけに、この潔さには驚かされますよね。

本わらび粉を使った生地はとにかくやわらかく、黒文字ですっと切るのが難しいほど。中には北海道産小豆のこしあんが包まれていて、饅頭のような姿をしています。1個340円(税込)と手に取りやすい価格ながら、多い日には1日1,000個以上売れることもあるといわれる看板商品。消費期限は当日中なので、まとめ買いよりも必要な分だけ買うのが芳光流です。

店頭では1個から予約が可能で、確実に手に入れたいなら電話予約が安心。月曜・木曜にはJR名古屋タカシマヤの銘菓百選でも数量限定で販売されていて、名駅からアクセスしたい方はそちらも選択肢になります。ただし取り置き不可・早い時間に売り切れることが多いので、狙うなら開店直後を!

芳光 基本情報

  • 住所:〒461-0037 名古屋市東区新出来1-9-1
  • アクセス:名鉄瀬戸線「森下」駅から徒歩約8分(徳川園の近く)
  • 営業時間:9:00~18:00
    ※わらび餅は季節限定。夏季(7~9月ごろ)は販売休止
  • 定休日:毎週日曜(年始・8月に休業日あり)

わらび餅の選び方

同じわらび餅でも、食感の軸で見るとお店の性格がくっきり分かれました。ふわとろで軽いのが琥珀堂、ぷるんと弾む大粒がおかしな大地、みっちり重い本わらび粉がもちつもたれつ、そして温度まで含めて完成されているのが雀おどり總本店。

エリアで選ぶなら、大須の食べ歩きに琥珀堂、覚王山さんぽに合わせておかしな大地、熱田神宮のお参り帰りにもちつもたれつ、栄でのお買い物ついでに雀おどり總本店といった具合。移動を考えるなら「矢場町 → 大須」は徒歩圏なので、この2軒だけ同じ日に回るのが現実的です。

なるしー

はじめの一軒に迷ったら、まずはワンコインの琥珀堂から。わらび餅の奥深さを知りたくなったら、雀おどり總本店へ。そして秋になったら、芳光のわらび餅を予約してみてください。季節を待って食べる和菓子というのもいいものですね。

よくある質問

最後に、名古屋のわらび餅に関するよくある質問にお答えします。

Q. 名古屋で食べ歩きできるわらび餅はありますか?

A. 大須の琥珀堂 大須店で販売している「舟わらび」(500円・税込)が食べ歩き向きです。舟形の容器に入ったテイクアウト専用メニューで、片手で持てるサイズ。新天地通商店街の中にあるので、大須散策のついでに立ち寄れます。

Q. 本わらび粉を使ったわらび餅はどこで食べられますか?

A. 今回紹介した中では、もちつもたれつ 神宮店の「自家製わらびもち」がわらび粉の力強さを感じられる一皿でした。琥珀堂も希少な本わらび粉をベースに、蓮根由来の粉末を合わせた生地を使っています。芳光のわらび餅も本わらび粉を使った代表格として知られています。

Q. 芳光のわらび餅はいつ買えますか?

A. 芳光のわらび餅は季節限定で、品質を守るため夏季(7~9月ごろ)は販売されません。例年10月ごろから翌初夏まで店頭に並びます。数量に限りがあるため、店頭または電話(052-931-4432)での予約がおすすめ。月曜・木曜はJR名古屋タカシマヤの銘菓百選でも数量限定で販売されています。

Q. わらび餅は持ち帰りできますか?

A. 琥珀堂 大須店はテイクアウト専門、芳光は手土産としての利用が中心です。おかしな大地・もちつもたれつ・雀おどり總本店はイートインで楽しむスタイル。雀おどり總本店は物販コーナーでも和菓子を扱っているので、手土産を探している方はあわせてチェックしてみてください。

Q. 何軒かを1日でまわれますか?

A. 矢場町(雀おどり總本店)と大須(琥珀堂)は徒歩圏内なので、この2軒は同じ日に回りやすいです。覚王山・神宮前・東区はそれぞれ路線が異なるため、無理に詰め込むより日を分けるほうが余裕を持って楽しめます。定休日も店舗ごとに違うので、出発前に確認しておくと安心です。